
流情山 圓照寺
所在地:兵庫県神崎郡福崎町八千種2393
兵庫県南西部の交通の要衝、福崎町に建つ圓照寺。移築後約150年経つ本堂を、耐震性と快適性向上のために建て替えることに。屋根の形や、山門正面に見える文字看板など、隅々までご住職のこだわりが反映されています。
お寺の建て替えを考えるようになったきっかけを教えてください。
修繕では追い付かないほど老朽化していたこと
旧本堂は、近隣にあったお堂を解体し、20年がかりで移築された由緒ある建物。当時は、部材をひとつずつ台車に載せて運んだそうです。私が住職になった約30年前にはすでに古く、あちこちに傷みが見られました。もちろん、古い木造建築にしかない趣も魅力的で、「リフォームでどうにかならないか」という意見も出ましたが、それでもかなりの費用がかかりますし、修繕費が後から後から必要になってきます。近くを山崎断層が走っていることで地震への不安もあり、住職になった当初から建て替えを考えていました。長期的な計画が必要だと判断し、22年前の平成14年5月から積み立てを開始。16年8カ月後に門徒さんそれぞれの積立金が100万円になり、「自分の代でどうにか建て替えを終わらせてほしい」との声が高まったことで本格的に動き出すことになりました。


トヨタホームにお決め頂いた理由を教えてください。
条件を満たすと同時に熱意が感じられたので
建て替えに当たって私が挙げた条件は3つありました。ひとつは「昔の建て方にこだわらないこと」。人が集まり、使ってこその本堂です。重要文化財のような外観の建物にする必要はなく、利用する人が使いやすいように建てるのがいい、と考えていました。2つめは「寒さ暑さをどうにかすること」。以前は屋内とはいえ障子で囲まれているだけで、特に冬の冷えと寒さが厳しく、門徒さんからもしばしば苦情を受けていました。台風の時には倒壊が心配で、台風が通り過ぎた後は広間の畳がずぶ濡れになり、その都度門徒さんにもご負担を掛けていました。3つめは「地震が起きても倒れない本堂にすること」。すぐ近くを山崎断層が走っているので、地震への不安が常にあったからです。
この条件で近くの工務店に個人的に打診してみたところ、鉄骨でかなりの金額に。ちょうどそんなときに、本山のホームページでトヨタホームの存在を知り連絡したところ、担当の方が数人のチームを組んで飛んできてくれました。分からないこともたくさんありましたが、質問するとすぐに回答がいただけて、熱意を感じることができました。阪神淡路大地震の1.5倍の強さの地震でも倒れない耐震性があり、3つの条件を満たしつつ予算的にも収まりそうで、あとは本堂としての様式をできる限り崩さないように建ててもらえるなら、と依頼を決めました。


▲トヨタホームの強みは、自動車をつくる技術と建築技術の2つを持っていること。オートメーション化された工場で家づくりの工程の85 %が終了するため、屋根が設置されるまでわずか2日間。建物の構造体が雨風にさらされることがないので、高い耐久性と安定した品質を確保することができる。
本堂が完成しての感想とこれからについて
誰でもどんな天候の日でも気軽に集まれる場所に

▲鉄骨構造のため、声明が気持ちよく堂内に響き渡る。夜間も、照明を上手に使って温かみと荘厳さを演出。お内陣に収まりきらなかった天井絵は格子の額に収めて、吹抜け側面に展示。お参りに来られる方々の目を楽しませつつ、広い空間を引き締めるアクセントになっている。
まずは快適で、子どもにも親しめる空間に
「暑さ寒さをどうにかすること」を解決してくれたのは、全館空調「スマート・エアーズ」です。門徒さんから「ルームエアコンを何台か付けたらいいのでは」という声もありましたが、天井高がある広い本堂を冷暖房するにはかえって維持費がかかる、と説明し納得していただけました。トヨタホームから「全館空調はずっとつけている方が節電になる」と言われたので、推奨された冷房28℃暖房17℃で24時間つけっぱなしにしています。今では門徒さんから「家に帰りたくなくなる」「ここにずっとおりたくなった」と言われるほど快適になりました。太陽光発電のおかげで電気代も気になりません。
暗い方が荘厳さが出るという考え方もあると思いますが、「暗い=怖い」と感じる子どもたちにもお寺に親しんで貰えるよう、明るさにこだわって照明コーディネーターの方に入っていただきました。もちろん、高齢の門徒さんにも明るさは好評です。
お内陣と外陣の間を仕切る巻障子には、明るい木目の折りたたみ扉を特注。閉め切るとご本尊に失礼なく外陣で過ごせるので、子どもたちの習い事などにも活用してもらいやすくなりました。




▲全館空調「スマート・エアーズ」で広い空間もムラなく冷暖房ができるため、広間と外廊下の間の障子を閉める必要が無く、最近は障子を取り外したままにして空間を広く使っているそう。巻障子を全閉すると壁のようになって、外陣全体が畳の大広間に。全開するとお内陣を広く見渡すことができる。
念願だった納骨堂も屋内につくれました
建て替えの際に何よりもつくりたかったのが納骨堂でした。今まではお預かりしたお骨を仕舞って置く場所が押入れしかなく、自由にお参りしていただくことができませんでした。今回は本堂の奥に、全館空調「スマート・エアーズ」で一年中24時間快適な納骨堂をつくりました。真夏でも真冬でも雨の日でも、天候に関係なく快適にお参りしていただけます。
外のお墓にご主人の納骨に来られた奥様が完成直後の納骨堂を見られて、「私はこっちにする!きれいで明るくて、みんなが楽しくおしゃべりしているみたいだから」と仰られたことがありました。若夫婦に「お父さんはどうするの?!」と言われていましたが(笑)。お墓の後継ぎがいない方にとってもご安心いただける納骨堂をつくることができて、私もホッとしました。
納骨堂は、大阪堺の業者に頼んで新しくつくってもらいましたが、お内陣の中の天井絵、宮殿、御開山の厨子、迎門柱などは旧本堂で使われていたものを修復し、新たに彩色や金箔を行って、製作当時の煌びやかさを蘇らせることができました。お寺らしい荘厳さや、以前の本堂の雰囲気を残すことができて、門徒さんにも喜んでいただけています。




▲IT関係に強いご住職は、建て替えの貴重な記録を息子様と一緒に動画にまとめてDVDを作成。取材当日に動画を見せていただいた収納式スクリーンは、日頃の集まりの際にも活躍しているそう。インスタグラムでも積極的に情報提供を行っておられる。